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Horizontal Pod Autoscalerウォークスルー

Horizontal Pod Autoscalerは、Deployment、ReplicaSetまたはStatefulSetといったレプリケーションコントローラー内のPodの数を、観測されたCPU使用率(もしくはベータサポートの、アプリケーションによって提供されるその他のメトリクス)に基づいて自動的にスケールさせます。

このドキュメントはphp-apacheサーバーに対しHorizontal Pod Autoscalerを有効化するという例に沿ってウォークスルーで説明していきます。Horizontal Pod Autoscalerの動作についてのより詳細な情報を知りたい場合は、Horizontal Pod Autoscalerユーザーガイドをご覧ください。

始める前に

この例ではバージョン1.2以上の動作するKubernetesクラスターおよびkubectlが必要です。 Metrics APIを介してメトリクスを提供するために、Metrics serverによるモニタリングがクラスター内にデプロイされている必要があります。 Horizontal Pod Autoscalerはメトリクスを収集するためにこのAPIを利用します。metrics-serverをデプロイする方法を知りたい場合はmetrics-server ドキュメントをご覧ください。

Horizontal Pod Autoscalerで複数のリソースメトリクスを利用するためには、バージョン1.6以上のKubernetesクラスターおよびkubectlが必要です。カスタムメトリクスを使えるようにするためには、あなたのクラスターがカスタムメトリクスAPIを提供するAPIサーバーと通信できる必要があります。 最後に、Kubernetesオブジェクトと関係のないメトリクスを使うにはバージョン1.10以上のKubernetesクラスターおよびkubectlが必要で、さらにあなたのクラスターが外部メトリクスAPIを提供するAPIサーバーと通信できる必要があります。 詳細についてはHorizontal Pod Autoscaler user guideをご覧ください。

php-apacheの起動と公開

Horizontal Pod Autoscalerのデモンストレーションのために、php-apacheイメージをもとにしたカスタムのDockerイメージを使います。 このDockerfileは下記のようになっています。

FROM php:5-apache
COPY index.php /var/www/html/index.php
RUN chmod a+rx index.php

これはCPU負荷の高い演算を行うindex.phpを定義しています。

<?php
  $x = 0.0001;
  for ($i = 0; $i <= 1000000; $i++) {
    $x += sqrt($x);
  }
  echo "OK!";
?>

まず最初に、イメージを動かすDeploymentを起動し、Serviceとして公開しましょう。 下記の設定を使います。

apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
  name: php-apache
spec:
  selector:
    matchLabels:
      run: php-apache
  template:
    metadata:
      labels:
        run: php-apache
    spec:
      containers:
      - name: php-apache
        image: registry.k8s.io/hpa-example
        ports:
        - containerPort: 80
        resources:
          limits:
            cpu: 500m
          requests:
            cpu: 200m
---
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: php-apache
  labels:
    run: php-apache
spec:
  ports:
  - port: 80
  selector:
    run: php-apache

以下のコマンドを実行してください。

kubectl apply -f https://k8s.io/examples/application/php-apache.yaml
deployment.apps/php-apache created
service/php-apache created

Horizontal Pod Autoscalerを作成する

サーバーが起動したら、kubectl autoscaleを使ってautoscalerを作成しましょう。以下のコマンドで、最初のステップで作成したphp-apache deploymentによって制御されるPodレプリカ数を1から10の間に維持するHorizontal Pod Autoscalerを作成します。 簡単に言うと、HPAは(Deploymentを通じて)レプリカ数を増減させ、すべてのPodにおける平均CPU使用率を50%(それぞれのPodはkubectl runで200 milli-coresを要求しているため、平均CPU使用率100 milli-coresを意味します)に保とうとします。 このアルゴリズムについての詳細はこちらをご覧ください。

kubectl autoscale deployment php-apache --cpu-percent=50 --min=1 --max=10
horizontalpodautoscaler.autoscaling/php-apache autoscaled

以下を実行して現在のAutoscalerの状況を確認できます。

kubectl get hpa
NAME         REFERENCE                     TARGET    MINPODS   MAXPODS   REPLICAS   AGE
php-apache   Deployment/php-apache/scale   0% / 50%  1         10        1          18s

現在はサーバーにリクエストを送っていないため、CPU使用率が0%になっていることに注意してください(TARGETカラムは対応するDeploymentによって制御される全てのPodの平均値を示しています。)。

負荷の増加

Autoscalerがどのように負荷の増加に反応するか見てみましょう。 コンテナを作成し、クエリの無限ループをphp-apacheサーバーに送ってみます(これは別のターミナルで実行してください)。

kubectl run -i --tty load-generator --rm --image=busybox --restart=Never -- /bin/sh -c "while sleep 0.01; do wget -q -O- http://php-apache; done"

数分以内に、下記を実行することでCPU負荷が高まっていることを確認できます。

kubectl get hpa
NAME         REFERENCE                     TARGET      MINPODS   MAXPODS   REPLICAS   AGE
php-apache   Deployment/php-apache/scale   305% / 50%  1         10        1          3m

ここでは、CPU使用率はrequestの305%にまで高まっています。 結果として、Deploymentはレプリカ数7にリサイズされました。

kubectl get deployment php-apache
NAME         READY   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE
php-apache   7/7      7           7           19m

負荷の停止

ユーザー負荷を止めてこの例を終わらせましょう。

私たちがbusyboxイメージを使って作成したコンテナ内のターミナルで、<Ctrl> + Cを入力して負荷生成を終了させます。

そして結果の状態を確認します(数分後)。

kubectl get hpa
NAME         REFERENCE                     TARGET       MINPODS   MAXPODS   REPLICAS   AGE
php-apache   Deployment/php-apache/scale   0% / 50%     1         10        1          11m
kubectl get deployment php-apache
NAME         READY   UP-TO-DATE   AVAILABLE   AGE
php-apache   1/1     1            1           27m

ここでCPU使用率は0に下がり、HPAによってオートスケールされたレプリカ数は1に戻ります。

複数のメトリクスやカスタムメトリクスを基にオートスケーリングする

autoscaling/v2beta2 APIバージョンと使うと、php-apache Deploymentをオートスケーリングする際に使う追加のメトリクスを導入することが出来ます。

まず、autoscaling/v2beta2内のHorizontalPodAutoscalerのYAMLファイルを入手します。

kubectl get hpa.v2beta2.autoscaling -o yaml > /tmp/hpa-v2.yaml

/tmp/hpa-v2.yamlファイルをエディタで開くと、以下のようなYAMLファイルが見えるはずです。

apiVersion: autoscaling/v2beta2
kind: HorizontalPodAutoscaler
metadata:
  name: php-apache
spec:
  scaleTargetRef:
    apiVersion: apps/v1
    kind: Deployment
    name: php-apache
  minReplicas: 1
  maxReplicas: 10
  metrics:
  - type: Resource
    resource:
      name: cpu
      target:
        type: Utilization
        averageUtilization: 50
status:
  observedGeneration: 1
  lastScaleTime: <some-time>
  currentReplicas: 1
  desiredReplicas: 1
  currentMetrics:
  - type: Resource
    resource:
      name: cpu
      current:
        averageUtilization: 0
        averageValue: 0

targetCPUUtilizationPercentageフィールドはmetricsと呼ばれる配列に置換されています。 CPU使用率メトリクスは、Podコンテナで定められたリソースの割合として表されるため、リソースメトリクスです。CPU以外のリソースメトリクスを指定することもできます。デフォルトでは、他にメモリだけがリソースメトリクスとしてサポートされています。これらのリソースはクラスター間で名前が変わることはなく、そしてmetrics.k8s.io APIが利用可能である限り常に利用可能です。

さらにtarget.typeにおいてUtilizationの代わりにAverageValueを使い、target.averageUtilizationフィールドの代わりに対応するtarget.averageValueフィールドを設定することで、リソースメトリクスをrequest値に対する割合に代わり、直接的な値に設定することも可能です。

PodメトリクスとObjectメトリクスという2つの異なる種類のメトリクスが存在し、どちらもカスタムメトリクスとみなされます。これらのメトリクスはクラスター特有の名前を持ち、利用するにはより発展的なクラスター監視設定が必要となります。

これらの代替メトリクスタイプのうち、最初のものがPodメトリクスです。これらのメトリクスはPodを説明し、Podを渡って平均され、レプリカ数を決定するためにターゲット値と比較されます。 これらはほとんどリソースメトリクス同様に機能しますが、targetの種類としてはAverageValueのみをサポートしている点が異なります。

Podメトリクスはmetricブロックを使って以下のように指定されます。

type: Pods
pods:
  metric:
    name: packets-per-second
  target:
    type: AverageValue
    averageValue: 1k

2つ目のメトリクスタイプはObjectメトリクスです。これらのメトリクスはPodを説明するかわりに、同一Namespace内の異なったオブジェクトを説明します。このメトリクスはオブジェクトから取得される必要はありません。単に説明するだけです。Objectメトリクスはtargetの種類としてValueAverageValueをサポートします。Valueでは、ターゲットはAPIから返ってきたメトリクスと直接比較されます。AverageValueでは、カスタムメトリクスAPIから返ってきた値はターゲットと比較される前にPodの数で除算されます。以下の例はrequests-per-secondメトリクスのYAML表現です。

type: Object
object:
  metric:
    name: requests-per-second
  describedObject:
    apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
    kind: Ingress
    name: main-route
  target:
    type: Value
    value: 2k

もしこのようなmetricブロックを複数提供した場合、HorizontalPodAutoscalerはこれらのメトリクスを順番に処理します。 HorizontalPodAutoscalerはそれぞれのメトリクスについて推奨レプリカ数を算出し、その中で最も多いレプリカ数を採用します。

例えば、もしあなたがネットワークトラフィックについてのメトリクスを収集する監視システムを持っているなら、kubectl editを使って指定を次のように更新することができます。

apiVersion: autoscaling/v2beta2
kind: HorizontalPodAutoscaler
metadata:
  name: php-apache
spec:
  scaleTargetRef:
    apiVersion: apps/v1
    kind: Deployment
    name: php-apache
  minReplicas: 1
  maxReplicas: 10
  metrics:
  - type: Resource
    resource:
      name: cpu
      target:
        type: Utilization
        averageUtilization: 50
  - type: Pods
    pods:
      metric:
        name: packets-per-second
      target:
        type: AverageValue
        averageValue: 1k
  - type: Object
    object:
      metric:
        name: requests-per-second
      describedObject:
        apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
        kind: Ingress
        name: main-route
      target:
        type: Value
        value: 10k
status:
  observedGeneration: 1
  lastScaleTime: <some-time>
  currentReplicas: 1
  desiredReplicas: 1
  currentMetrics:
  - type: Resource
    resource:
      name: cpu
    current:
      averageUtilization: 0
      averageValue: 0
  - type: Object
    object:
      metric:
        name: requests-per-second
      describedObject:
        apiVersion: networking.k8s.io/v1beta1
        kind: Ingress
        name: main-route
      current:
        value: 10k

この時、HorizontalPodAutoscalerはそれぞれのPodがCPU requestの50%を使い、1秒当たり1000パケットを送信し、そしてmain-route Ingressの裏にあるすべてのPodが合計で1秒当たり10000パケットを送信する状態を保持しようとします。

より詳細なメトリクスをもとにオートスケーリングする

多くのメトリクスパイプラインは、名前もしくは labels と呼ばれる追加の記述子の組み合わせによって説明することができます。全てのリソースメトリクス以外のメトリクスタイプ(Pod、Object、そして下で説明されている外部メトリクス)において、メトリクスパイプラインに渡す追加のラベルセレクターを指定することができます。例えば、もしあなたがhttp_requestsメトリクスをverbラベルとともに収集しているなら、下記のmetricブロックを指定してGETリクエストにのみ基づいてスケールさせることができます。

type: Object
object:
  metric:
    name: http_requests
    selector: {matchLabels: {verb: GET}}

このセレクターは完全なKubernetesラベルセレクターと同じ文法を利用します。もし名前とセレクターが複数の系列に一致した場合、この監視パイプラインはどのようにして複数の系列を一つの値にまとめるかを決定します。このセレクターは付加的なもので、ターゲットオブジェクト(Podsタイプの場合は対象Pod、Objectタイプの場合は説明されるオブジェクト)ではないオブジェクトを説明するメトリクスを選択することは出来ません。

Kubernetesオブジェクトと関係ないメトリクスに基づいたオートスケーリング

Kubernetes上で動いているアプリケーションを、Kubernetes Namespaceと直接的な関係がないサービスを説明するメトリクスのような、Kubernetesクラスター内のオブジェクトと明確な関係が無いメトリクスを基にオートスケールする必要があるかもしれません。Kubernetes 1.10以降では、このようなユースケースを外部メトリクスによって解決できます。

外部メトリクスを使うにはあなたの監視システムについての知識が必要となります。この設定はカスタムメトリクスを使うときのものに似ています。外部メトリクスを使うとあなたの監視システムのあらゆる利用可能なメトリクスに基づいてクラスターをオートスケールできるようになります。上記のようにmetricブロックでnameselectorを設定し、ObjectのかわりにExternalメトリクスタイプを使います。 もし複数の時系列がmetricSelectorにより一致した場合は、それらの値の合計がHorizontalPodAutoscalerに使われます。 外部メトリクスはValueAverageValueの両方のターゲットタイプをサポートしています。これらの機能はObjectタイプを利用するときとまったく同じです。

例えばもしあなたのアプリケーションがホストされたキューサービスからのタスクを処理している場合、あなたは下記のセクションをHorizontalPodAutoscalerマニフェストに追記し、未処理のタスク30個あたり1つのワーカーを必要とすることを指定します。

- type: External
  external:
    metric:
      name: queue_messages_ready
      selector: "queue=worker_tasks"
    target:
      type: AverageValue
      averageValue: 30

可能なら、クラスター管理者がカスタムメトリクスAPIを保護することを簡単にするため、外部メトリクスのかわりにカスタムメトリクスを用いることが望ましいです。外部メトリクスAPIは潜在的に全てのメトリクスへのアクセスを許可するため、クラスター管理者はこれを公開する際には注意が必要です。

付録: Horizontal Pod Autoscaler status conditions

autoscaling/v2beta2形式のHorizontalPodAutoscalerを使っている場合は、KubernetesによるHorizontalPodAutoscaler上のstatus conditionsセットを見ることができます。status conditionsはHorizontalPodAutoscalerがスケール可能かどうか、そして現時点でそれが何らかの方法で制限されているかどうかを示しています。

このconditionsはstatus.conditionsフィールドに現れます。HorizontalPodAutoscalerに影響しているconditionsを確認するために、kubectl describe hpaを利用できます。

kubectl describe hpa cm-test
Name:                           cm-test
Namespace:                      prom
Labels:                         <none>
Annotations:                    <none>
CreationTimestamp:              Fri, 16 Jun 2017 18:09:22 +0000
Reference:                      ReplicationController/cm-test
Metrics:                        ( current / target )
  "http_requests" on pods:      66m / 500m
Min replicas:                   1
Max replicas:                   4
ReplicationController pods:     1 current / 1 desired
Conditions:
  Type                  Status  Reason                  Message
  ----                  ------  ------                  -------
  AbleToScale           True    ReadyForNewScale        the last scale time was sufficiently old as to warrant a new scale
  ScalingActive         True    ValidMetricFound        the HPA was able to successfully calculate a replica count from pods metric http_requests
  ScalingLimited        False   DesiredWithinRange      the desired replica count is within the acceptable range
Events:

このHorizontalPodAutoscalerにおいて、いくつかの正常な状態のconditionsを見ることができます。まず最初に、AbleToScaleは、HPAがスケール状況を取得し、更新させることが出来るかどうかだけでなく、何らかのbackoffに関連した状況がスケーリングを妨げていないかを示しています。2番目に、ScalingActiveは、HPAが有効化されているかどうか(例えば、レプリカ数のターゲットがゼロでないこと)や、望ましいスケールを算出できるかどうかを示します。もしこれがFalseの場合、大体はメトリクスの取得において問題があることを示しています。最後に、一番最後の状況であるScalingLimitedは、HorizontalPodAutoscalerの最大値や最小値によって望ましいスケールがキャップされていることを示しています。この指標を見てHorizontalPodAutoscaler上の最大・最小レプリカ数制限を増やす、もしくは減らす検討ができます。

付録: 数量

全てのHorizontalPodAutoscalerおよびメトリクスAPIにおけるメトリクスはquantityとして知られる特殊な整数表記によって指定されます。例えば、10500mという数量は10進数表記で10.5と書くことができます。メトリクスAPIは可能であれば接尾辞を用いない整数を返し、そうでない場合は基本的にミリ単位での数量を返します。これはメトリクス値が11500mの間で、もしくは10進法表記で書かれた場合は11.5の間で変動するということを意味します。

付録: その他の起きうるシナリオ

Autoscalerを宣言的に作成する

kubectl autoscaleコマンドを使って命令的にHorizontalPodAutoscalerを作るかわりに、下記のファイルを使って宣言的に作成することができます。

apiVersion: autoscaling/v1
kind: HorizontalPodAutoscaler
metadata:
  name: php-apache
  namespace: default
spec:
  scaleTargetRef:
    apiVersion: apps/v1
    kind: Deployment
    name: php-apache
  minReplicas: 1
  maxReplicas: 10
  targetCPUUtilizationPercentage: 50

下記のコマンドを実行してAutoscalerを作成します。

kubectl create -f https://k8s.io/examples/application/hpa/php-apache.yaml
horizontalpodautoscaler.autoscaling/php-apache created