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Windows Podとコンテナに対するGMSAの設定
Kubernetes v1.18 [stable]
このページでは、Windowsノード上で動作するPodとコンテナに対するグループ管理サービスアカウント(GMSA)の設定方法を示します。 グループ管理サービスアカウントは特別な種類のActive Directoryアカウントで、パスワードの自動管理、簡略化されたサービスプリンシパル名(SPN)の管理、および管理を他の管理者に委任する機能を複数のサーバーに提供します。
Kubernetesでは、GMSA資格情報仕様は、Kubernetesクラスター全体をスコープとするカスタムリソースとして設定されます。 WindowsのPodおよびPod内の個々のコンテナは、他のWindowsサービスとやり取りする際に、ドメインベースの機能(例えばKerberos認証)に対してGMSAを使用するように設定できます。
始める前に
Kubernetesクラスターが必要で、kubectl
コマンドラインツールがクラスターと通信できるように設定されている必要があります。
クラスターにはWindowsワーカーノードを持つことが求められます。
このセクションでは、各クラスターに対して一度だけ実施する必要がある一連の初期ステップについて説明します:
GMSACredentialSpec CRDのインストール
カスタムリソースタイプGMSACredentialSpec
を定義するために、GMSA資格情報仕様リソースに対するCustomResourceDefinition(CRD)をクラスター上で設定する必要があります。
GMSA CRDのYAMLをダウンロードし、gmsa-crd.yamlとして保存します。
次に、kubectl apply -f gmsa-crd.yaml
を実行してCRDをインストールします。
GMSAユーザーを検証するためのWebhookのインストール
Podまたはコンテナレベルで参照するGMSA資格情報仕様を追加および検証するために、Kubernetesクラスター上で2つのWebhookを設定する必要があります:
-
Mutating Webhookは、(Podの仕様から名前で指定された)GMSAへの参照を、JSON形式の完全な資格情報仕様としてPodのspecの中へ展開します。
-
Validating Webhookは、すべてのGMSAへの参照に対して、Podサービスアカウントによる利用が認可されているか確認します。
上記Webhookと関連するオブジェクトをインストールするためには、次の手順が必要です:
-
証明書と鍵のペアを作成します(Webhookコンテナがクラスターと通信できるようにするために使用されます)
-
上記の証明書を含むSecretをインストールします。
-
コアとなるWebhookロジックのためのDeploymentを作成します。
-
Deploymentを参照するValidating WebhookとMutating Webhookの設定を作成します。
上で述べたGMSA Webhookと関連するオブジェクトを展開、構成するためのスクリプトがあります。
スクリプトは、--dry-run=server
オプションをつけることで、クラスターに対して行われる変更内容をレビューすることができます。
Webhookと関連するオプジェクトを(適切なパラメーターを渡すことで)手動で展開するためのYAMLテンプレートもあります。
Active DirectoryにGMSAとWindowsノードを構成する
Windows GMSAのドキュメントに記載されている通り、Kubernetes内のPodがGMSAを使用するために設定できるようにする前に、Active Directory内に目的のGMSAを展開する必要があります。 Windows GMSAのドキュメントに記載されている通り、(Kubernetesクラスターの一部である)Windowsワーカーノードは、目的のGMSAに関連づけられたシークレット資格情報にアクセスできるように、Active Directory内で設定されている必要があります。
GMSA資格情報仕様リソースの作成
(前述の通り)GMSACredentialSpec CRDをインストールすると、GMSA資格情報仕様を含むカスタムリソースを設定できます。 GMSA資格情報仕様には、シークレットや機密データは含まれません。 それは、コンテナランタイムが目的のコンテナのGMSAをWindowsに対して記述するために使用できる情報です。 GMSA資格情報仕様は、PowerShellスクリプトのユーティリティを使用して、YAMLフォーマットで生成することができます。
以下は、GMSA資格情報仕様をJSON形式で手動で生成し、その後それをYAMLに変換する手順です:
-
CredentialSpecモジュールをインポートします:
ipmo CredentialSpec.psm1
-
New-CredentialSpec
を使用してJSONフォーマットの資格情報仕様を作成します。 WebApp1という名前のGMSA資格情報仕様を作成するには、New-CredentialSpec -Name WebApp1 -AccountName WebApp1 -Domain $(Get-ADDomain -Current LocalComputer)
を実行します -
Get-CredentialSpec
を使用して、JSONファイルのパスを表示します。 -
credspecファイルをJSON形式からYAML形式に変換し、Kubernetesで設定可能なGMSACredentialSpecカスタムリソースにするために、必要なヘッダーフィールドである
apiVersion
、kind
、metadata
、credspec
を記述します。
次のYAML設定は、gmsa-WebApp1
という名前のGMSA資格情報仕様を記述しています:
apiVersion: windows.k8s.io/v1
kind: GMSACredentialSpec
metadata:
name: gmsa-WebApp1 # これは任意の名前で構いませんが、参照時に使用されます
credspec:
ActiveDirectoryConfig:
GroupManagedServiceAccounts:
- Name: WebApp1 # GMSAアカウントのユーザー名
Scope: CONTOSO # NETBIOSドメイン名
- Name: WebApp1 # GMSAアカウントのユーザー名
Scope: contoso.com # DNSドメイン名
CmsPlugins:
- ActiveDirectory
DomainJoinConfig:
DnsName: contoso.com # DNSドメイン名
DnsTreeName: contoso.com # DNSルートドメイン名
Guid: 244818ae-87ac-4fcd-92ec-e79e5252348a # GUID
MachineAccountName: WebApp1 # GMSAアカウントのユーザー名
NetBiosName: CONTOSO # NETBIOSドメイン名
Sid: S-1-5-21-2126449477-2524075714-3094792973 # GMSAのSID
上記の資格情報仕様リソースはgmsa-Webapp1-credspec.yaml
として保存され、次のコマンドを使用してクラスターに適用されます: kubectl apply -f gmsa-Webapp1-credspec.yml
指定されたGMSA資格情報仕様上にRBACを有効にするためのクラスターロールの設定
各GMSA資格情報仕様リソースに対して、クラスターロールを定義する必要があります。
これは特定のGMSAリソース上のuse
verbを、通常はサービスアカウントであるsubjectに対して認可します。
次の例は、前述のgmsa-WebApp1
資格情報仕様の利用を認可するクラスターロールを示しています。
ファイルをgmsa-webapp1-role.yamlとして保存し、kubectl apply -f gmsa-webapp1-role.yaml
を使用して適用します。
# credspecを読むためのロールを作成
apiVersion: rbac.authorization.k8s.io/v1
kind: ClusterRole
metadata:
name: webapp1-role
rules:
- apiGroups: ["windows.k8s.io"]
resources: ["gmsacredentialspecs"]
verbs: ["use"]
resourceNames: ["gmsa-WebApp1"]
指定されたGMSA credspecを使用するためのサービスアカウントへのロールの割り当て
(Podに対して設定される)サービスアカウントを、上で作成したクラスターロールに結びつける必要があります。
これによって、要求されたGMSA資格情報仕様のリソースの利用をサービスアカウントに対して認可できます。
以下は、上で作成した資格情報仕様リソースgmsa-WebApp1
を使うために、既定のサービスアカウントに対してクラスターロールwebapp1-role
を割り当てる方法を示しています。
apiVersion: rbac.authorization.k8s.io/v1
kind: RoleBinding
metadata:
name: allow-default-svc-account-read-on-gmsa-WebApp1
namespace: default
subjects:
- kind: ServiceAccount
name: default
namespace: default
roleRef:
kind: ClusterRole
name: webapp1-role
apiGroup: rbac.authorization.k8s.io
Podのspec内で参照するGMSA資格情報仕様の設定
PodのspecのフィールドsecurityContext.windowsOptions.gmsaCredentialSpecName
は、要求されたGMSA資格情報仕様のカスタムリソースに対する参照を、Podのspec内で指定するために使用されます。
これは、Podのspec内の全てのコンテナに対して、指定されたGMSAを使用するように設定します。
gmsa-WebApp1
を参照するために追加された注釈を持つPodのspecのサンプルです:
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
labels:
run: with-creds
name: with-creds
namespace: default
spec:
replicas: 1
selector:
matchLabels:
run: with-creds
template:
metadata:
labels:
run: with-creds
spec:
securityContext:
windowsOptions:
gmsaCredentialSpecName: gmsa-webapp1
containers:
- image: mcr.microsoft.com/windows/servercore/iis:windowsservercore-ltsc2019
imagePullPolicy: Always
name: iis
nodeSelector:
kubernetes.io/os: windows
Podのspec内の個々のコンテナも、コンテナ毎のsecurityContext.windowsOptions.gmsaCredentialSpecName
フィールドを使用することで、要求されたGMSA credspecを指定することができます。
設定例:
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
labels:
run: with-creds
name: with-creds
namespace: default
spec:
replicas: 1
selector:
matchLabels:
run: with-creds
template:
metadata:
labels:
run: with-creds
spec:
containers:
- image: mcr.microsoft.com/windows/servercore/iis:windowsservercore-ltsc2019
imagePullPolicy: Always
name: iis
securityContext:
windowsOptions:
gmsaCredentialSpecName: gmsa-Webapp1
nodeSelector:
kubernetes.io/os: windows
(上記のような)GMSAフィールドが入力されたPod specがクラスターに適用されると、次の一連のイベントが発生します:
-
Mutating WebhookがGMSA資格情報仕様リソースへの全ての参照を解決し、GMSA資格情報仕様の内容を展開します。
-
Validating Webhookは、Podに関連付けられたサービスアカウントが、指定されたGMSA資格情報仕様上の
use
verbに対して認可されていることを保証します。 -
コンテナランタイムは、指定されたGMSA資格情報仕様で各Windowsコンテナを設定します。 それによってコンテナはGMSAのIDがActive Directory内にあることを仮定でき、そのIDを使用してドメイン内のサービスにアクセスできます。
ホスト名またはFQDNを使用してネットワーク共有に対して認証する
PodからSMB共有へのホスト名やFQDNを使用した接続で問題が発生した際に、IPv4アドレスではSMB共有にアクセスすることはできる場合には、次のレジストリキーがWindowsノード上で設定されているか確認してください。
reg add "HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\hns\State" /v EnableCompartmentNamespace /t REG_DWORD /d 1
その後、動作の変更を反映させるために、実行中のPodを再作成する必要があります。 このレジストリキーがどのように使用されるかについてのより詳細な情報は、こちらを参照してください。
トラブルシューティング
自分の環境でGMSAがうまく動作しない時に実行できるトラブルシューティングステップがあります。
まず、credspecがPodに渡されたことを確認します。
そのためには、Podのひとつにexec
で入り、nltest.exe /parentdomain
コマンドの出力をチェックする必要があります。
以下の例では、Podはcredspecを正しく取得できませんでした:
kubectl exec -it iis-auth-7776966999-n5nzr powershell.exe
nltest.exe /parentdomain
の結果は次のようなエラーになります:
Getting parent domain failed: Status = 1722 0x6ba RPC_S_SERVER_UNAVAILABLE
Podが正しくcredspecを取得したら、次にドメインと正しく通信できることを確認します。 まずはPodの中から、ドメインのルートを見つけるために、手短にnslookupを実行します。
これから3つのことがわかります:
- PodがDCまで到達できる
- DCがPodに到達できる
- DNSが正しく動作している
DNSと通信のテストをパスしたら、次にPodがドメインとセキュアチャネル通信を構築することができるか確認する必要があります。
そのためには、再びexec
を使用してPodの中に入り、nltest.exe /query
コマンドを実行します。
nltest.exe /query
結果は次のように出力されます:
I_NetLogonControl failed: Status = 1722 0x6ba RPC_S_SERVER_UNAVAILABLE
これは、Podがなんらかの理由で、credspec内で指定されたアカウントを使用してドメインにログオンできなかったことを示しています。 次のコマンドを実行してセキュアチャネルを修復してみてください:
nltest /sc_reset:domain.example
コマンドが成功したら、このような出力を確認することができます:
Flags: 30 HAS_IP HAS_TIMESERV
Trusted DC Name \\dc10.domain.example
Trusted DC Connection Status Status = 0 0x0 NERR_Success
The command completed successfully
もし上記によってエラーが解消された場合は、次のライフサイクルフックをPodのspecに追加することで、手順を自動化できます。 エラーが解消されなかった場合は、credspecをもう一度調べ、正しく完全であることを確認する必要があります。
image: registry.domain.example/iis-auth:1809v1
lifecycle:
postStart:
exec:
command: ["powershell.exe","-command","do { Restart-Service -Name netlogon } while ( $($Result = (nltest.exe /query); if ($Result -like '*0x0 NERR_Success*') {return $true} else {return $false}) -eq $false)"]
imagePullPolicy: IfNotPresent
Podのspecに上記のlifecycle
セクションを追加すると、nltest.exe /query
コマンドがエラーとならずに終了するまでnetlogon
サービスを再起動するために、Podは一連のコマンドを実行します。